「兄は常に弟の先を行かなければならない」と気負う兄。そんな兄をいつの間にか追い越し、先に宇宙への切符を手にした弟。「共に宇宙に行く」という兄弟の約束は果たされるのか?共に夢を追う兄弟の絆を描くヒューマン・ドラマ!TVアニメ化、アニメ映画化、実写化もされています! 

 

 

宇宙兄弟のあらすじ

 

南波六太(なんば・むった)と弟の日々人(ひびと)は幼い頃、夜空に漂う謎の飛行物体を目撃する。それが月に向かって飛び去った後、二人は共に宇宙を目指す約束をするのであった。 

 

兄は常に弟の先を行かねばならない」を信条とする六太は、幼年の頃は弟の模範となるべく、常に難題に挑み克服しようとするチャレンジ精神を持っていたが、いつの間にか自分を追い越し、先に宇宙飛行士となって宇宙への切符を手にした弟に対し、次第に劣等感を抱くようになる。 

 

弟は夢を叶える一歩手前。自分は無職。なかなか転職先が決まらず、自暴自棄になりかけた六太だが、アメリカで訓練を受けている日々人から、宇宙飛行士になるための試験を受けるよう働きかけられる。 

 

一度は諦めた子供の頃の夢と約束を果たすため、受験を決意する六太だが…。 

 

宇宙兄弟のネタバレや感想

2006年7月6日のある夜、六太(12)と日々人(9)は団地裏の原っぱに棲む生物を探索中、夜空の真ん中にぽつんと浮かぶ不思議な飛行物体に出くわします。 

 

  • 六太「うわっ!うわっ!何アレ?!」 
  • 日々人「わかんない!」 

 

怪現象に呆然とした二人が見つめる中、その物体はじっと止まってるだけかと思ったら、急に速度を上げて月に向かって飛んで行ってしまいました。二人が宇宙を目指すきっかけになった夜でした。 

 

それから19年後の2015年。六太31歳、日々人28歳。 

 

プロゴルファー猿のようなツンツン頭の日々人君は、今やJAXA(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)の優秀な宇宙飛行士。運命のあの夜に誓った「月に行く」という目標に確実に近づいています。さすが出産直後のツンヘアスタイルを大人になっても変えない男。石のような意志の強さがヒシヒシと伝わってきます。 

 

一方、則巻千兵衛さんのようなモジャモジャ頭の六太君は、運命のあの夜に誓った「火星に行く」という目標はどこへやら、なぜか自動車メーカーに就職し、挙句の果てに上司に頭突きを食らわせて無職に。出産直後のモジャヘアスタイルを大人になっても変えない男のくせに、まるでこんにゃくのような意志の弱さです。 

 

というか、二人共、出産直後の髪の毛多すぎ… 

 

昔は「兄は常に弟の先を行かねばならない。これ兄の努めナリ」な~んて言って、どんなことにもチャレンジして弟の模範になってたのに、今はこのザマ。どうしてこうなった? 

 

実は、決して六太君の能力がグレードダウンしたわけではないのです。自動車メーカー時代だって、彼が設計した車は賞を獲得するほど素晴らしい。車の整備だって、実に効率のよい動きでちゃちゃっとこなしてしまう。少々ズボラな日々人君と違って、細かいところにまで目が届く。緩んだネジは締めずにいられない。技術者としては非常に優秀な人と言えるでしょう。 

 

ただ、メンタルが弱い。いつの間にか弟に先を越され、弟に対してコンプレックスを抱いてしまったようです。 

 

俺は兄だ!兄よりも優秀な弟などいるはずがない!しかし弟は兄である俺を追い越しやがった!この俺を!兄であるこの俺を! 

 

「北斗の拳」のジャギさんじゃあるまいし、なまじ子供の頃に「兄は弟よりも優秀で当然」みたいな考えにとらわれてしまったばかりに、気負い過ぎちゃったんですね。もっと「タッチ」の上杉達也君みたいに、肩の力を抜いて「日々人は日々人。俺は俺。みんな違って、みんないい」みたいな感じで、原っぱに佇む花のように自然に生きていれば、こんなことにはならなかっただろうに。 

 

しかし、兄の優秀さを誰よりも理解している日々人君は、意気消沈した兄にもう一度夢を見させるべく、宇宙飛行士になるための試験を受けさせます。「兄よ。貴方なら必ず宇宙飛行士になれる。昔のように、俺と張り合ってくれ。あの夜に誓った約束を果たしてくれ。つまらない男になってくれるな」との思いを込めて。 

 

まとめ

かなり前に、兄貴から「これ読んでみ?面白いよ?」と勧められていた本作。実は、「宇宙兄弟」という、なんだかよくわからないタイトルと、なんかガチガチした絵柄のために、さして興味をそそられず、そのまま放置していました。 

が、最近宇宙から強い信号がキャッチされたというニュースを聞き、急に宇宙に目覚めて本作を手にしてみました。 

我が道を順調に進み、表舞台で活躍している優秀な弟と、同じく優秀なんだけど、周りから誤解されてなかなか表に立てない兄。あだち充氏の「タッチ」に登場する、上杉達也と弟の和也みたいな、そんな感じ。 

なまじ兄であるという立場から、子供の頃から常に弟の模範となるべく、「先へ、先へ」と気張り続けていた六太。それなのに、日々人はいつの間にか六太の先を行くようになってしまった。 

俺はダメな兄だ、と気落ちしてしまったのか、六太の体から徐々にやる気が失われていき、弟との差はどんどん広がってしまいます。 

弟を守りたい。守れなければ兄失格」という六太の気持ちはよくわかります。しかし、一方で弟の気持ちをいまいち分かっていない。 

弟にとって、兄はいつまでたっても兄なのです。兄に認めてもらいたいから頑張る。兄がいるから頑張れる。その結果、兄を超えてしまったとしても、兄に対する気持ちは変わりません。六太が悩む必要などないのです。 

日々人が六太にないものを持っているように、六太も日々人にないものを持っている。同じ環境に育った兄弟とはいえ、一人一人考えも能力も違う独立した人間なのだから、これは当然のことです。違いを認め、尊重することが大事なのです。 

ダメダメだった六太が、日々人や周りの人たちから元気を貰い、徐々に本来の姿を見せていく過程が魅力の本作。今後の展開が楽しみです。頑張れ六太!